6づき仕事を進めるのではなく,根拠に基づき仕事を進めることになります。そのため,担当者が自分の頭で考えて,「私はこう考えるので,相手にこういう主張をしていきます」とか,「私はこう考えるので,契約はこのようにすべきです」等と述べても,上司や先輩からは「それではダメだ」と言われることになるでしょう。このような状況において,とりわけ司法試験に合格している場合には,「自分は法律に自信がある,なぜ自分の考えが否定されるのか」,「自分は信頼されていないのだろうか」等と不安感や不信感を持つかもしれません。 しかし,上司や先輩がそのような態度を取るのは担当者が信頼されていないからではなく,単に「根拠」があって初めて実務を回すことができるところ,(純粋に頭で考えただけの)担当者の考えが,そこでいう「根拠」にならないというだけです。 法律事務所の仕事でいえば,予防法務であれ紛争解決法務であれ,最終的には裁判所によって判断されることとなる可能性があります。その際,裁判所に「弁護士が考えたことなら正しいだろう」と判断してもらえるわけではありません。しかし,きちんとした「根拠」に基づいた考えを示すことができれば(100%裁判所に同意してもらえるとはいえないものの),裁判所を説得することができる見込みが高まります。 また,法務における仕事であっても,全社的リスク管理という重要な任務を果たす上で,担当者がこう考えたというだけでは足りません。やはり,そのリスク管理のための対策が法的に有効であることを裏付けるための根拠が必要です。そして,そこで管理するリスクが法的リスクである限り,法律事務所の仕事と同様に最終的には裁判所に判断される可能性があります。2 だからこそリーガルリサーチが重要であること このように,実務では根拠が問われるところ,その「根拠」を探す営為こそがリーガルリサーチです。 §1では,リーガルリサーチは,具体的事案を踏まえた具体的問題意識の存在を前提に,リスク管理を目的として行う,法律に関する情報・資料の調査であるとしたところ,「法律に関する情報・資料」はまさに上記1の「根拠」に当たります。 だからこそ,リーガルリサーチを行って根拠を探し,その根拠に基づいて業務を行う必要があるのです。第1章 リーガルリサーチの見取り図
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