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82 インターネット上で無料で入手できる情報だけでは到底「根拠」とならないこと だからこそ,案件を正しい方向に進める(なお,案件を進めない場合を含むことにつき,§1参照)ため,正しい方法でリサーチをすることが弁護士や法務にとって不可欠です。 そして,確かにインターネット上で無料で入手できる情報を利用することで「あたり」をつけることができる(→§22以下)という意味で,Google等の検索エンジンでインターネット上を検索することもリーガルリサーチの一つの手法ではあります。 しかし,目の前の「問い」に対しインターネット上で検索をして出てきた結果そのものが,上記の意味における根拠となるのかというと,多くの場合は否定的に解さざるを得ません(例外につき§73を参照)。 そもそも,編集の目が入っていないブログやホームページ等の法律情報は,一般論としては,編集機能を果たす第三者がいる場合よりも質が低くなります。 そして,そもそもインターネット上には,様々な理由で,誤っていたり,質が低い法律情報が多数掲載されたりしています。インターネット上の法律情報が誤っている典型的な理由の一つは,情報が「古い」というものです。例えば,Googleは様々なアルゴリズムを利用していますが,伝統的には多くのリンクがされている情報を信頼されている情報として高くランク付けする傾向にあります。そして,そのような情報は少なくとも法律情報に関する限り「古びていてもう既にアウトオブデート」というものが少なくないのです(もちろん,アップデートされ続けているものもありますので,最終更新日を確認したり,ファイルのプロパティ情報等から推測したりすることが望ましいです。)。 さらに,その情報の読者が「法律の前提知識がない人」であること,すなわち一般向けの記事が多いということも指摘できます。そこで,分かりやすさに振ってしまっていて,正確性が必要な「プロ」の役に立たない傾向があるといえます。例えば,条文とその文言に基づく議論をしていないものがよく見られます。条文とその文言に基づかない一般論や,そこで問題としている問いに対する(結論だけの)回答は,少なくとも法律実務におけるリサーチでは何の根拠にもなりません。とりわけ,多くの法的問題は,「原則としてAだが,例外的にXという場合にはBだ」といった構造を持ちます。だからこそ,法律実務においては,条文に照らし,どのような要件・効果や原則・例外という構造があるかを踏まえ,それぞれの事案に適第1章 リーガルリサーチの見取り図

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