4 今後の課題等 翻訳の費用を誰が負担するかは,司法コストを当事者と国のいずれに割りMail:0124 日本語に通じない外国人に対する訴訟での翻訳文添付について(憲32条)が侵害されかねません。翻訳の費用は国庫負担が望ましいですが,〔湯ノ口〕313よる文書の送達,証拠調べ等及び執行認許の請求の嘱託並びに訴訟上の救助請求書の送付について」であると裁判所から説明を受けた弁護士がいます。この通達では,根拠条文として,民事訴訟手続に関する条約等の実施に伴う民事訴訟手続の特例等に関する規則2条1項を挙げています。しかし,この通達は,専ら国際司法共助の場面での翻訳のことについてのものであり,日本国内における外国人への送達について直接関わるものではないと考えられます。 翻訳文の添付を求める訴訟指揮がされるようになったのは,外国判決についての執行請求を棄却する東京地裁平成26年12月10日判決(判時2306号73頁)の影響ではないかという議論があります。当該事件の被告は,語学留学のためにアメリカに在留していた日本人で,日常会話以上の英語の語学力はありませんでした。同判決は,被告が同国では適法な送達方法である直接交付の方法によって訴状等の送達を受けたとしながらも,日本語の翻訳文が添付されていなかったことから,当該送達により被告が現実に訴訟手続の開始を了知することができ,かつ,その防御権の行使に支障のないものであったということはできないとして,民事訴訟法118条2号所定の被告に対する「訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達」の要件に欠けるとしました。日本の裁判所が在外邦人に関する外国判決の執行にあたり翻訳文の添付を求めるのであれば,相互主義の観点から,在留外国人に関する事件においても翻訳文の添付を求めるべきであると考える裁判官が増えたのではないかというものです。振るかという問題です。当事者の負担が過大になれば,裁判を受ける権利財政の制約もあるでしょう。当事者に負担させるのであれば,書面全てではなく,要旨をまとめて翻訳することも許容するなど,過度な負担が生じないような工夫が期待されます。
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