推薦の言葉i 私は,1999年に米国留学から帰国後,弁護士実務を再開した時,留学で学んだ国際人権法の知識を実務で活かし,弁護士へのアクセスが困難な渉外家事事件の分野に取り組むことにしました。渉外家事事件の実務では,言葉の問題のほか,国際私法の知識や外国法の調べ方や送達等の実践的な知識・経験も求められます。そうした経験から,日本や外国で暮らす国際的な家族に関する相談に対処できる弁護士が増えるためには,渉外家事事件の実務でぶつかった問題に取り組んだ経験や入手した情報をお互いに共有する必要性を痛感し,弁護士のネットワークや書籍作りに関わってきました。 渉外家事事件の実務をテーマにした書籍では,渉外事件を扱った経験がない弁護士にも国際裁判管轄や準拠法といった国際私法の概念を説明することがどうしても必要になります。一方で,読者にとっては,総論的な説明よりも,家事事件という幅広い分野の中で実際に受ける具体的な事件の処理について,また,できれば,相談・事件が関連する外国の場合にどうなるのかという具体的な情報を得たいという要請があります。この両方の要請を満たすことは,容易ではありません。それは,著者が単独でも数名でも,著者自身の経験や知識,さらに調査によっても,あらゆる種類の法律問題と外国について,実務で多く出会う事件・相談に対する具体的,実践的な情報を提供することには限界があるからです。 この点で,本書は,国際私法に関する説明よりも,実践的な情報提供と解説を重視し,設問で扱われている法律問題と国の範囲が極めて幅広いことに驚かされます。これほど幅広く具体的な設問を登載することができたのは,本書が,外国人ローヤリングネットワークに参加する弁護士の間で,実際に提起された弁護士からの質問に対する他の弁護士から寄せられた回答や情報を基に作成されたものだからこそだと思います。その意味で,本書は,渉外家事事件を既に扱っている弁護士にとっても,また,これから扱おうという弁護士にとっても,実践的な情報が大量に詰まっている,大変貴重な書籍です。 本書の設問から,日本の弁護士が日々の実務の中で出会う渉外家事事件の幅広さがうかがえると思います。日本には,これだけ幅広い国が関わる家族推薦の言葉
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