1:私学をめぐる法律問題学校法人と私立学校は、実に多様な法律関係に囲まれている。ガバナンスやコンプライアンスといった法律に関わる問題は民間企業のものであり、私学とは無縁と考える風潮もあるようだが、実際には、民間企業以上に、学校法人は法律問題の坩堝である。4学校法人と私立学校をめぐる法律問題は、①法人管理、②学生・生徒関係、③人事・労務、④その他の法律問題の四つに大別することができ、それぞれの法律問題に対応する法体系がある。まず、①の法人管理は、学校法人の設立、管理、清算等と私学行政に関するものであり、私学法、助成法などが規律する分野である。役員及び評議員の選任・解任、理事会及び評議員会の運営、予算及び決算、事業計画、事業報告、寄附行為の変更のほか、私学助成、所轄庁による助言・指導・行政処分などは、この分野に属する問題である。次に、②の学生・生徒関係は、民間企業には存在しない、学校に特有の法律問題である。学教法のほか、民法等が規律する。入学・退学・卒業、学納金の納入・返還、懲戒、いじめ、体罰などは、学生・生徒関係に属する問題である。③の人事・労務は、民間企業、国、地方公共団体等でも存在する法律問題である。学校法人と教職員の雇用関係には、民間企業と同様に、労働基準法、労働契約法等が適用されるに特有の労使慣多い。④のその他の法律問題には、取引業者との契約や、個人情報の管理、私学団体の運営などが挙げられる。基本的に、民間企業と同様の法律関係が生じる分野であり、民法、個人情報保護法、独占禁止法等が適用される。学校法人をめぐる法律問題をまとめたものが、【図表1-1】である。(1)が、教員や研究者にだけ適用される法(2)律や、私学(3)行があり、一旦法的紛争に発展すると、解決が難しいことも
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