i私立学校法は、不思議な法律です。学校法人で働く教職員、私立学校に通う学生・生徒はかなりの数に上りますが、私立学校法の存在が意識されることは、ほとんどありません。弁護士でも、私立学校法を見たことがあるという人は少数であり、何やら謎めいた法律だと思われている節もあります。また、私立学校法は、不遇な法律でもあります。ほとんどの六法に収録してもらえず、大学の法学部で私立学校法を扱う科目があるという話は、寡聞にして知りません。法人のルールを定めるという意味では私立学校法も会社法も同じ仲間のはずですが、司法試験の必修科目であり、ほぼ全ての法学部で教えられている会社法には、羨望の念すら抱きます。私立学校法を扱う実務家・研究者がとても少ないためか、学校法人の実務で参照できる解説書は限られています。著者の実務家としての師でもある、俵正市弁護士の『私立学校法』シリーズが最良の実務書でしたが、『解説 私立学校法(新訂三版)』(法友社、2015年)を最後に改訂がなく、近時の法改正に対応した書籍が乏しい状況となっていました。本書は、私立学校法の体系書であるとともに、学校法人の役員・職員の方や、学校法人をクライアントに持つ弁護士、司法書士、公認会計士等の士業の方へ向けた実務書でもあります。当初はコンパクトにまとめるつもりだったのですが、令和5年改正後の私立学校法を体系的に解説し、実務で参照できる情報を盛り込み、改正前の条文に言及し、さらに寄附行為作成例の逐条解説も載せてみよう……と欲張った結果、相当な厚さになってしまいました。手軽に持ち運びたかったという読者の方には、お詫び申し上げるほかありません。令和5年改正について、少しばかりの感想を述べておきたいと思います。従前の私立学校法は、監査を受ける立場の理事長が監事を選任すること、訴訟手続に関する規定や刑罰規定を欠くこと、会計監査の規定が私立学校振はしがきは し が き
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