実務 私立学校法
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1:機関とは法人は観念上の存在であり、見ることも触れることもできないから、法人の意思決定や業務執行は、生身の人間(自然人)や自然人が集まった会議体が代わりに行わなければならない。法人の意思決定や業務執行を担う自然人と会議体を、「機関」と呼ぶ。株式会社でいえば、株主総会、取締役、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人などが、代表的な「機関」である(会社法295条、326条参照)。従前、私学法は機関という単語を用いてこなかったが、令和5年改正により、機関の総則的な規定が設けられた。第1節70学校法人は、機関として、①理事(5人以上)、②理事会、③監事(2人以上)、④評議員(6人以上で、理事の定数を超える人数)、⑤評議員会、⑥理事選任機関を置かなければならない(新法18条1項)。それぞれの括弧の中の数字は、最低限確保しなければならない人数である(新法18条3項)。このほかに、寄附行為に定めを置くことで、⑦会計監査人を、学校法人の機関として置くことができる。会計監査人を置かなくても原則として違法ではないが、大臣所轄学校法人等では、会計監査人を必ず置かなければならない(新法144条1項)。会計監査人を置く場合、その定数は、寄附行為で定めることとされている(新法18条2項、4項、23条1項11号)。要するに、令和5年改正によって、改正前私学法にも定めがあった理事、理事会、監事、評議員、評議員会が学校法人の機関であることが明確にされ、新たに、理事選任機関と会計監査人が、学校法人の機関に追加されたこととなる。なお、上記①〜⑦のほかに、常任理事会、常勤理事会、監事会などを設置する学校法人も少なくない。いずれも、学校法人の意思決定や業務執行を担学校法人の機関―総論

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