実務 私立学校法
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興助成法にしか置かれていないことなど、ガバナンスの観点からは不十分な面が否めませんでした。令和5年改正により、株式会社や一般社団法人、一般財団法人等と遜色ない規定が整備され、法解釈上の多くの疑義も解消されました。改正法成立に至るまでの有識者会議等では、評議員会を最高意思決定機関にすることも議論されましたが、改正法では、理事選任機関の構成や評議員の選任は各学校法人の寄附行為の定めに委ねることとされ、学校法人の実情に即した内容になったといえそうです。改正法では、大臣所轄学校法人等の定義、理事会・評議員会における特別利害関係人の範囲、決算に関する手続など、重要な事項が政令・省令に委任されています。しかし、政令・省令の改正が大幅に遅れたほか、令和5年8月に改正された寄附行為作成例が、令和5年11月、令和6年3月にも改正されるなど、若干の混乱も見られるところであり、令和7年4月1日の施行日まで、紆余曲折がありそうです。令和6年夏以降に予想される寄附行為変更の認可申請に間に合わせるため、本書は短期間での執筆とならざるを得ませんでした。分かりづらい記載や、不十分な法解釈に基づく解説については、読者の皆様のご海容を願う次第です。改訂の機会に恵まれることがあれば、ブラッシュアップを試みたいと思っています。本書の執筆に際しては、学校法人の役員・職員の方や私学団体の方から、学校法人の実務について様々な情報をご提供いただきました。本書の内容が実務に即した内容になっているとすれば、著者の能力によるところは皆無に等しく、ひとえに、ご提供いただいた貴重な情報のおかげです。ごく私的なことですが、体系書の執筆は、法曹の末端の一員として、一つの目標でした。学生時代は陸上競技に明け暮れ、碌に就職もせずに大学院を渡り歩くことを許してくれた両親へ、僅かながらではあっても良い報告になるのではないかと思っています。末尾となりましたが、日本加除出版株式会社編集部の山口礼奈氏には、非はしがきii

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