18_経保
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バナンス確保の機能といわれてきました。しかし、①については、近時の調査で必ずしも実効性が伴っていないことがわかってきており、過大な保証責任とのアンバランスを正当化できないという考え方が有力となっています。そうすると、金融機関にとっての経営者保証の必要性は、②に集約することができます。ここでいう中小企業のガバナンス確保の機能は、有事(主債務の履行が困難となった局面)において確実に機能することが求められます。金融機関にとって経営者保証を徴求しないことの最大の弊害は、主債務者の有事において、経営者が、企業経営を投げ出すことで、主債務者の整理を放棄したり、担保物件の処分に非協力的であったりすることによって、金融機関の“主債務者からの回収”に支障が生じることだからです。⑵ 経営者保証に依存しない融資の一層の促進 金融機関にとって保証が必要となるのは融資先企業が有事の際であり、平時(融資先企業が窮境に陥る前の局面)においては保証など不要であるにもかかわらず、保証を徴求できるのは平時に限られるという点が、経営者保証を考える上で大きなジレンマといえます。このことが、金融機関が融資取組み時に経営者保証を徴求しないという選択を困難にし、「保証の要否を判断できないので、とりあえず徴求しておく」という安易な対応(金融庁いわく「慣行としての保証徴求」)につながっているのが実態です。そこで、金融機関が融資取組み時に、①保証の必要性を事前に十分検討し、安易に保証を徴求しないようにすること、②保証を徴求する場合には顧客の納得を得るための十分な説明を行い、その結果を記録することが求められています。これがガイドラインの入口部分の考え方です。 なお、保証を徴求するということは、経営者には、経営者保証が不要となる要件を充足するという、あるべき将来の姿に向かって、中小・零細企業が自発的に成長することを促し、金融機関と、経営者とが協働して、経営者保証を不要とする経営態勢の構築に向けたコミュニケーションを深め、中小企業等と金融機関との信頼関係の基盤を強固にすることを求めることであり、そのゴールは、中小企業等の活力を引き出し、日本経済の活性化に資することです。したがって、金融機関は、仮に検討の結果保証徴求を要するとの判断に至った場合でも、「保証徴求時に本章2項(→12頁)で詳述する2023年改正監督指針が定める説明やその記録をすれば、それで終わり」ということにはならず、保証徴求により、金融機関には「当該事業者との間で、保証解除に向けたリレーションに取り組まなければならない」という新たな義務が発生します。これにより、金融機関が保証を徴求する場合に必要なコストは大幅に増加することから、コスト削減の観点から、監督指針改正を契機として保証を徴求しないとした金融機関も多いようです。6第 1 章 総 論

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