児保
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2.組織体制の検討に至るまで第1章 制度解説編児童虐待対応件数の増加に伴う増員が追いつかず、新採職員の育成、スーパーバイズが可能な人数にも一定閾値があり、全国を見渡しても特に都市部を中心に人材確保・育成に大きな課題があると認識している。⑴ 平成12年の児童虐待の防止等に関する法律の成立までの状況 平成14年の才村純ほか「児童虐待対応に伴う児童相談所への保護者のリアクション等に関する調査研究」では、児童相談所を設置・運営する全ての自治体を対象に、児童虐待対応に伴う児童相談所への保護者の加害・妨害事件、行政不服申立て、行政・民事訴訟、自己情報の開示請求の実態に関する質問紙調査を実施した。その結果、これらのうち加害・妨害事件、行政不服申立事案及び自己情報の開示請求が急増しており、多くの自治体がこれらへの対応について以前にも増して取り組んでいる実態が明らかにされた。 特に、事件数の推移をみると平成10年度〜平成13年度上半期までの3年半における加害・妨害事件数は計352件である。平成10年度が25件、平成11年度80件、平成12年度111件、平成13年度上半期136件であり、平成13年度は上半期だけで前年度1年分を上回るなど、加害・妨害事件は年々急増している実態が表面化する中、児童虐待の防止等に関する法律の成立に至る。 現場においては、従来の相談援助的ソーシャルワークの展開を基本に、不登校の問題が社会問題化した時期には、児童相談所内に自由に学習や音楽、ゲームなどができるフリールーム等を設置するなど職員が支援に努めるとともに、野外活動なども取り入れるなどの取組を進めていた。後には、学校教育サイドが適応指導教室の設置を進めるなどにより、自然にその役割は終わることになるが、その時代その時代の子どもたちのニーズを先取りしてきた。 また、個人的な実践経験ではあるが、引きこもる家庭に、地域の保健師さんなどと週に2〜3回訪問し、時には訪問時に皿洗いをしたり、未就園の子どもを母親とともに療育機関に連れていったりもし、結果、軽度の障がいが分かり、療育通園に結び付けるなどの事例に取り組んだ記憶は鮮明に記憶している。このように、しっかり寄り添うソーシャルワークの展開の経験が土台としてあるうえで、介入的ソーシャルワークが展開できることが、本来求められている児童相談所職員の姿ではないかと考えている。 しかしながら、児童相談対応件数が急増するなか、児童相談所は、傷んでしまった養育・親子関係の修復に努めつつも、共感と援助を基本としたアプローチから介入指導的アプローチまで幅のある対応が求められ、特に、子どもの最善の利益のため、子どもの心身の安心安全を守るために、必要とあれ22

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