iまえがき 本書は、編者の一人である大畑が、一時保護にまつわる法的な論点を、一つ一つ丹念に整理して書き記してきたことが出発点になった。書きためたものが次第に増えてきて、これを書籍にできないかと考えるようになった。 編者の一人、進藤は、裁判官のキャリアを経た後、弁護士として児童相談所のサポートを通じて児童虐待の問題に接してきた。本来、子どもの利益を優先して確保することが制度の目的のはずであるが、児童相談所を代理する弁護士と保護者を代理する弁護士とでかみ合わない場面が少なくなく、児童福祉法や児童虐待防止法の法律的な解釈を共有する必要があると感じていた。大畑が集積したものを形にすることによって、その一助になるのではと考えた。 ここに編者の一人であり、長く児童福祉分野における法改正や実務に携わってきた岩佐が合流し、書籍作りの議論が進められた。 書籍にするに当たっては、次の視点を加えることになった。 一つは、一時保護の実情や課題についての説明を児童相談所の関係者に展開していただいた。本書を法的な論点だけではなく、一時保護がどういうもので、実務上何が問題となっているのかについての理解を深めるものになればと考えた。 もう一つは、児童相談所側の立場ではなく、「加害」とされる保護者の立場や自立援助の立場等で関わる弁護士にも執筆をお願いした。複合的な視点で一時保護の実情が浮かび上がるのではないかと考えた。 書籍化が進む中で、令和6年4月1日から「一時保護施設の設備及び運営に関する基準」(令和6年内閣府令第27号)が施行され、全部改正された「一時保護ガイドライン」が適用されることになった。また、令和7年6月1日からは、一時保護開始時の司法審査制度が開始されるが、現場では様々な戸惑いや課題を抱えている。 本書は、一時保護をめぐり、様々な視点で深く掘り下げたもので、まま え が き
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