児保
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103す(場所的移動)」の要素が重要だとも言い切れない。例えば、上記case第1節 「一時保護」制度の概要どもを一時的にその養育環境から離すもの」というフレーズが使われている。3)上記case①はまさにそのような場面を想定しているし、確かに現実の一時保護もこのような場面が多いと言える。 しかし、一時保護の実態をよく考えると、必ずしも「養育環境から離②のように、一時保護委託(後記第7節)の場合は、一時保護の前後において養育環境の変化を伴わない場合がある。また、case②だけではなく、case③のような場合のように、こどもの居所の移動を伴わない一時保護の開始も現実にはありうる。そのためか、一時保護GLも別の箇所では「一時保護の多くは、こどもを一時的にその養育環境から離す行為」4)(波線強調は筆者)という表現もみられる。一時保護の本質としては、「行政権限を用いて、こどもを(委託先も含めて)児童相談所の監護下におくこと」にあり、そのことが定義の中で明確にされるべきと思われる。 今般、一時保護の司法審査が導入されるに当たり、一時保護の開始時期の判断が大きな問題となった。後述のとおり、一時保護状の請求は、「一時保護を開始した日(初日を含む)から起算して7日以内」と定められたからである。そこで、こども家庭庁は一時保護の開始日を、「児童相談所が①一時保護の決定に基づき、②児童をその保護下に置いた日をいうもの」との解釈を示すようになった。5)これを流用すれば、一時保護の定義は、「児童相談所の一時保護の決定に基づき、児童をその保護下におくこと」だと言えよう。現実には一時保護に伴い、これまでの養育環境(保護者等)から分離させることが多いとはいえ、場所的移動や養育環境の変化は一時保護の本質ではなく、あくまで付随する要素だと考えることができる。⑵ 一時保護の制度の特徴 検討を深める前に、一時保護の制度のポイントを、筆者なりにいくつか挙げてみる。ア 何のための制度か ─「目的」「機能」「理由」の言葉の混乱 何のために一時保護が実施されるのか。この問題は、一時保護の「目

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