105第1節 「一時保護」制度の概要「一時保護は、こどもの安全の迅速な確保、適切な保護を行い、こどもの心身の状況、置かれている環境などの状況を把握するために行うものであり、虐待を受けたこどもや非行のこども、養護を必要とするこども等の最善の利益を守るために行われるものである。」イ 「こどもの最善の利益」のための一時保護制度 近時の一時保護GLでは、一時保護は「こどもの最善の利益」を守るために行うものであることがはっきりと明記されるようになった。 そうすると、一時保護の制度の担い手としては、「こどもの最善の利益をどのように考えるか」「こどもの権利擁護はどうあるべきか」という根源的な問題と向き合わなければならない。従前、一時保護の目的の説明時に「こどもの安全の確保」に重点をおいていたのは、あくまで「こどもの安全」が「こどもの最善の利益」を保障するに当たって一番重要と言える要素だからである。現場では「こどもの安全確保」は大前提であり、そのうえで様々な事情が考慮要素ともなる事案もみられ、判断が難しい場面にも直面する(第2節4、第3節2参照)。 こどもの最善の利益を考えるに当たって重要なこととしては、「総合的にこどもの視点にたって、子ども一人ひとりの状況にあわせて最も良いことの判断が求められること」と「そのプロセスとしてこどもの意見表明権の保障が重要である」といったことが挙げられる。12) さらに筆者としては、こどもの育つ権利の視点に触れておきたい。すなわち、具体的場面でこどもの最善の利益が何かを探るに当たっては、①生命、身体の安全だけではなく、精神的、道徳的及び社会的な発達が保障されること(子どもの権利条約27条参照)、②「いま、ここ」における現在のこどもの最善と、過去から未来の時間的変化による育ちや変化を視野に入れた長期的視点での最善の両面を意識することを忘れてはならないと考える。また、「最善」の利益といっても、必ずしも何か唯一の正解があるわけではない。こども自身の意見や意向を踏まえながら多角的に検討することが重要と言えよう。13)
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