2 法制度上の子どものアドボケイト328第4章 課題検討編その反省から今日では、権利擁護のための活動では当事者の声を聴き、その権利主張を支える「アドボカシー」の側面が特に重要視されている。 子どもの支援領域においても「権利擁護」は専らプロテクションの意味合いで捉えられがちであり「アドボカシー」の意味合いは軽視され、子どものための議論が子ども抜きで行われがちである。こうした中で「アドボカシー」としての子どもの権利擁護の意義を再確認するとともに、それを実現していくための方策として提唱されるようになったのが子どものアドボケイトである。 子どもの権利条約12条では「その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。」「自己に影響を与えるいかなる司法的及び行政的手続においても、直接に又は代理人もしくは適当な団体を通じて聴聞される機会を与えられる」と規定され、子どものアドボカシーの中核を成す意見表明権の保障が掲げられている。 子どもの権利条約の精神に則った児童福祉法においても、こうした子どもの意見表明権の保障が求められるが、残念ながら平成28年の大改正の際にも、一時保護や措置決定の際の法律上の要件として子どもの意向に関する規定が盛り込まれることはなかった。児童相談所の実務としては、現場の創意工夫により一時保護や措置決定の際に子どもの声を丁寧に聴き、できる限り意向が反映されるよう努力がなされてきたが標準的な権利保障には程遠い状態にあった。加えて、虐待相談件数が年々増加する中で、現場はますます疲弊し、子どもの声を聴くことがより難しい状況にある。こうした事態を受けて令和4年の改正児童福祉法では、子どもの意見表明権を標準的に保障するための仕組みとして一時保護や措置決定の際の「意見聴取等措置義務」や「意見表明等支援事業」が新たに規定されるに至った。 もっとも、子どもの権利条約が保障する子どもの意見表明権は一時保護や措置決定の場面に限るものではなく、すべての子どもを対象として
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