児保
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330第4章 課題検討編フォーマルアドボカシー」は親や養育者、近親者によるもの、「ピアアドボカシー」は友達や同種の当事者経験をした仲間によるもの、そして「独立型アドボカシー」とはこのいずれにも属さない独立した立場によるものである。 もっとも、現実にはこの概念図どおりに厳密に分類されるわけではない。例えば、施設職員は仕事として養育に携わる専門職という意味ではフォーマルアドボカシーに位置づけられるが、仕事として割り切れない養育者としての側面を強調すればインフォーマルアドボカシーともいえる。弁護士や独立型のソーシャルワーカーは、フォーマルアドボカシーと独立型アドボカシーのいずれとして捉えるべきかについても見解が分かれている。もとより子どもとの関係性や立ち位置は年月の経過に伴い揺れ動くものである。独立型アドボカシーとしての関わりが長く続けば、本人との間での一定の利害関係が生じ、フォーマルアドボカシーやインフォーマルアドボカシーの立ち位置に近づいていく。⑵ 複数のアドボカシーと相補性 重要なのはどの分類に位置づけられるかよりも、それぞれの立場性による違いや長所・短所を理解し相互に補完し合いながらアドボカシーの実現を目指していくことにある。各アドボカシーが優劣を競い合うのではなく、自分には聴くことができない声を他のアドボカシーが聴くことで互いに補い合う関係にあると理解すべきである。 例えば、子どもがフォーマルアドボカシーに話した内容と、独立型アドボカシーに話した内容が異なっていた場合に、どちらの内容が本音なのかと対立的に考えそうになる。しかし、子どもの声はその人との関係性から生じる固有のものであり多面的なものでもある。そのどちらもが本音といえるかもしれないし、そのどちらも本音とはいえないかもしれない。どちらが本音なのかを考えるのではなく「いつ、どこで、誰が、どのような言葉で聴き取った言葉であるか」を意識してそれぞれの声を丁寧に受け止めていくことがより重要である。そのようにして複数のアドボカシーが聴き取った声を持ち寄りながら、その子どもを理解していく必要がある。

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