第 1 章 総 論【判例1】東京地判平 9 .5 .26判時1610 ─ 22〔ニフティサーブ事件・第一審〕事案 Y1は、Y2の運営するパソコン通信に設置されていた電子会議(フォーラム)に、Xを誹謗中傷する内容の発言を書き込んだ。Xは、本件書込みにより、名誉を毀損されたとして、書込みをしたY1、フォーラムの運営者であるY2及びフォーラムのシステムオペレーターであるY3に対して、損害賠償を請求した。判旨 一部認容、一部棄却システムオペレーター(Y3)の不法行為責任について 「少なくともシスオペにおいて、その運営・管理するフォーラムに、他人の名誉を毀損する発言が書き込まれていることを具体的に知ったと認められる場合には、当該シスオペには、その地位と権限に照らし、その者の名誉が不当に害されることがないよう必要な措置をとるべき条理上の作為義務があったと解するべきである。……そして、作為義務違反が認められれば、少なくともY3に過失があったことが事実上推認される……本件全証拠によっても、右推認を妨げるべき事情は認められないというべきであるから、右各発言に関しては、Y3にもXに対する不法行為が成立するものというべきである。」【判例2】東京地判平11・ 9 ・24判時1707 ─ 139〔都立大学事件〕事案 Y1の設置する大学の学生であるY2は、大学の管理下にあるコンピューターシステム内に開設したホームページ上に、Xらが傷害事件を起こし刑事事件になったという印象を与える文書を掲載した。Xらは、文書の掲載は名誉毀損であるとして、Y2に対して、文書の削除及び損害賠償を請求するとともに、Y1に対して、インターネット上の名誉毀損文書の削除及び損害賠償等を請求した。判旨 一部認容、一部棄却ネットワーク管理者(Y1)の削除義務について 「加害者でも被害者でもないネットワーク管理者に対して、名誉毀損行為の被害者に被害が発生することを防止すべき私法上の義務を負わせることは、原則として適当ではないものというべきである。」 「ネットワークの管理者が名誉毀損文書が発信されていることを現実に発生した事実であると認識した場合においても、右発信を妨げるべき義務を被害者に対する関係においても負うのは、名誉毀損文書に該当すること、加害行為の態様が甚だしく悪質であること及び被害の程度も甚大であることなどが一見して明白であるような極めて例外的な場合に限られるものと22
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