第1部 序 第3 インターネット上の情報に関する法的責任23いうべきである。」⑵ 社会的法益等を侵害する情報に関するプロバイダ等の責任 社会的法益等を侵害する情報について、プロバイダ等が削除等の送信防止措置を講じたとしても、民事責任及び刑事責任を負わないものと解されます。 これに対し、プロバイダ等が社会的法益等を侵害する情報について送信防止措置を講ずることなく放置した場合には、当該不作為について刑事責任を負うかが問題となります。 この点について、プロバイダ責任制限法制定前の裁判例としては、最決平成13.7.16刑集55 ─ 5 ─ 317の第一審判決等があります。 具体的には、この第一審(京都地判平9.9.24判時1638 ─ 160)は、パソコンネットを開設運営する等していた被告人に対して、「わいせつ画像を見せて、会員を増やせば金儲けになるとの考えから、会員がわいせつ画像のデータをハードディスクにアップロードするのを単に黙認していたというのではなく、自ら電子掲示板で会員に対し、わいせつ画像をアップロードするよう奨励するとともに、わいせつ画像のデータを30画像分アップロードした会員には2か月の会費を免除し、多数あるわいせつ画像データを会員がアクセスしやすいように分類するなどしていた」こと等から、会員がアップロードしたわいせつ画像データについてもわいせつ物公然陳列罪の成立を肯定しています。 このような裁判例を前提とすれば、プロバイダ等は、社会的法益等を侵害する情報について送信防止措置を講ずることなく放置するのみならず、違法な情報のアップロードに積極的に関与する等した場合には、刑事責任を負い得る可能性があるものと解されます。⑶ 公序良俗に反する情報に関するプロバイダ等の責任 公序良俗に反する情報について、プロバイダ等が削除等の送信防止措置を講じた場合、抽象的には発信者に対する不法行為が成立する余地があるものと解されます。 これに対し、プロバイダ等が公序良俗に反する情報について送信防止措置を講ずることなく放置した場合、当該情報は違法ではないため、プロバイダ等は不作為による民事責任及び刑事責任を負わないものと解されます。説
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