第 2 章 損害賠償責任の制限【判例6】知財高判平24.2 .14判時2161 ─ 86〔チュッパチャプス事件〕事案 Yが運営するインターネットショッピングモールにおいて、出店者が、Xが商標権を有する商標と類似する標章を付した商品を、出店ページの販売のために展示した。Xは、Yに対して、上記商品の展示・販売はXの商標権を侵害する等として、その差止めと損害賠償を請求した。判旨 控訴棄却ウェブページ運営者の責任について 「ウェブページの運営者が、単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず、運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い、出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって、その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り、上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し、商標権侵害を理由に、出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」 「以上の見地に立って本件をみるに……ウェブサイトを運営するYとしては、商標権侵害の事実を知ったときから 8 日以内という合理的期間内にこれを是正したと認めるのが相当である。」 「本件の事実関係の下では、Yによる『楽天市場』の運営がXの本件商標権を違法に侵害したとまでいうことはできない」【判例7】東京地判平16.11.24判タ1205 ─ 265事案 Xは、Yが運営するインターネット上の掲示板に記載された情報により、名誉、プライバシー等を侵害され、Yがそれを知りながら放置したこと等により損害を被ったとして、Yに対して、不法行為に基づき、損害賠償等を請求した。判旨 一部認容、一部棄却削除義務違反の不法行為について 「Yは、Xから……投稿の削除要求を受けた 1 週間後には、本件掲示板から同投稿を削除しているから、社会通念上、削除が遅きに失したとまではいうことができず、同投稿について削除義務違反の不法行為が成立するということはできない。」60
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