情プラ
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第2部 逐条解説⑴ 情報の流通による権利侵害ア 意 義 「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたとき」とは、2条1号が定める「特定電気通信」による情報の流通自体により現実に他人の権利が侵害されたときをいいます。電子メール等の「特定電気通信」によらない情報の流通により権利侵害が生じた場合には、本項は適用されません。また、適法な情報を利用してインターネット外で詐欺が行われた場合のように、情報の流通と権利侵害との間に相当因果関係が認められない場合には、本項は適用されません。 「他人の権利」には、名誉、プライバシー、著作権、商標権等のあらゆる権利及び法律上保護される利益が含まれるものと解され、特定の権利に限定されません。特定個人の権利のほか、法人の権利も含まれます。 なお、社会的法益を侵害する情報(わいせつ画像、児童ポルノ、規制薬物に係る広告等)、有害情報(人を自殺に誘引する情報、殺人等の違法行為を仲介する情報等)は、一般的には、情報の流通によって「他人の権利」を侵害するものではありませんので、本項の適用対象とはなりません。ただし、わいせつ画像、児童ポルノは、民事上も名誉、プライバシー等の権利を侵害する可能性があり、その場合には、本項が適用されます。イ 適法な情報が流通した場合 特定電気通信による情報の流通が他人の権利を侵害せず適法な場合には、不法行為等の成立要件である権利の侵害が認められないため、特定電気通信役務提供者は本項によることなく当然に、当該情報について送信防止措置を講じなかった不作為について損害賠償責任を負いません。⑵ 関係役務提供者 「関係役務提供者」とは、問題となっている情報が記録媒体に記録されたウェブサーバ等の特定電気通信設備を運用している特定電気通信役務提供者(2条4号)のことをいいます。 「関係役務提供者」の具体例は、名誉毀損情報が投稿された電子掲示板の管理者、著作権を侵害する動画が投稿された動画投稿サイトの運営者、商標権を侵害する出品画像等が掲載されたオークションサイトの運営者等です。第1 損害賠償責任の制限(3条)61

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