AI大全
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第2章 生成AI開発・提供・利用と著作権68この場合は、①の例外とは異なり、学習そのものが著作権侵害となるわけではなく、あくまで AI で生成した AI 生成物の利用により著作権侵害が発生した場合に、AI 開発者が当該著作権侵害について(規範的)行為主体としての責任を負う可能性がある、ということです。このように、生成・利用段階で AI 利用者による著作権侵害行為が行われた場合において、当該 AI の開発を行った AI 開発者が当該著作権侵害についても責任主体となるかの問題(規範的行為主体の問題)については、本章3で詳細に説明しますが、「考え方」37 頁では下記のとおりまとめられています。① ある特定の生成 AI を用いた場合、侵害物が高頻度で生成される場合は、事業者が侵害主体と評価される可能性が高まるものと考えられる。② 事業者が、生成 AI の開発・提供に当たり、当該生成 AI が既存の著作物の類似物を生成する蓋然性の高さを認識しているにも関わらず、当該類似物の生成を抑止する措置を取っていない場合、事業者が侵害主体と評価される可能性が高まるものと考えられる。③ 事業者が、生成 AI の開発・提供に当たり、当該生成 AI が既存の著作物の類似物を生成することを防止する措置を取っている場合、事業者が侵害主体と評価される可能性は低くなるものと考えられる。④ 当該生成 AI が、事業者により上記の⑵キ③の手段を施されたものであるなど侵害物が高頻度で生成されるようなものでない場合においては、たとえ、AI 利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成 AI にプロンプト入力するなどの指示を行い、侵害物が生成されたとしても、事業者が侵害主体と評価される可能性は低くなるものと考えられる。つまり、AI 開発者が規範的行為主体として生成・利用段階の著作権侵害について責任を負う可能性があるのは、①ある特定の生成 AI を用いた場合、侵害物が高頻度で生成される場合や、②生成 AI の開発・提供に当たり、当該生成 AIが既存の著作物の類似物を生成する蓋然性の高さを認識しているにもかかわらず、当該類似物の生成を抑止する措置を取っていない場合に限られます。例外①と同様、対象著作物が海賊版であるか否かは全く関係がありません。

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