AI大全
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692:開発・学習段階における著作物利用行為と著作権侵害ⅲ 海賊版の利用についての「考え方」における記載海賊版の利用についての「考え方」28 頁〜 29 頁の記載と、それに対する筆者の意見は以下のとおりです。(「考え方」28 頁)○ AI 開発事業者や AI サービス提供事業者が、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行ったという事実は、これにより開発された生成 AI により生じる著作権侵害についての規範的な行為主体の認定に当たり、その総合的な考慮の一要素として、当該事業者が規範的な行為主体として侵害の責任を問われる可能性を高めるものと考えられる(AI 開発事業者又は AI サービス提供事業者の行為主体性について、後掲⑵キも参照)。この部分は、先ほどの例外②「生成・利用段階における著作権侵害行為について AI 開発者等が規範的行為主体として責任を負う場合」について説明している部分です。しかし、AI 開発者等が生成・利用段階の著作権侵害について規範的行為主体として責任を負うのは、先ほど述べたように、「①ある特定の生成 AI を用いた場合、侵害物が高頻度で生成される場合や、②生成 AI の開発・提供に当たり、当該生成 AI が既存の著作物の類似物を生成する蓋然性の高さを認識しているにもかかわらず、当該類似物の生成を抑止する措置を取っていない場合」に限られます。そのような事情がない場合において、「(AI 開発者等が)ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行ったという事実」が、規範的行為主体性が認められる可能性を高める要素として働くとは考えにくいように思います。(「考え方」28 頁〜 29 頁)○この点に関して、こうした海賊版等の権利侵害複製物を掲載するウェブサイトからの学習データの収集は、少量の学習データを用いて、学習データに含まれる著作物の創作的表現の影響を強く受けた生成物が出力されるような追加的な学

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