AI大全
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4752:アルゴリズム・ノウハウの知財戦略〜秘匿化か権利化か〜AI に関するアルゴリズム・ノウハウを独占し、他者による模倣から守る方法(知財戦略)は、大きく分けて2つあります。1つは「秘匿化」、要するに隠すことです。具体的には、厳重に当該アルゴリズム・ノウハウを秘匿・管理することで保護・独占する方法です。「知財戦略」という場合、後述の「権利化(特許化)による保護」のみを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、他者に知られなければ模倣されることはありませんので、この「秘匿化」は、立派な知財戦略の1つであり、使いようによっては非常に強力な手法です。たとえば、コカ・コーラの製法については、特許出願などはされていませんが、具体的な配合や製造過程は社内のごく一部の人間しか知らない秘密となっています。このように、コカ・コーラは「秘匿化」により、他社からの模倣を防いでいます。もう1つは「権利化(特許化)による保護」です。これは、当該知的財産を公開しつつ、権利化(特許化)を行い、特許権により保護する方法です。当然のことですが、「秘匿」による保護と「権利化(特許化)による保護」は両立しません。これは、「権利化(特許化)による保護」を行おうとすれば、権利化の過程で必然的に対象物を公開せざるをえず「秘匿」を行うことができなくなるためです。そのため、AI のアルゴリズムやノウハウを保護しようと思えば「秘匿」による保護と「権利化(特許化)による保護」のどちらかを選択する必要があります。まず、それぞれのメリット・デメリットを比較すると以下のとおりとなります1)⑴ 秘匿化と権利化1)詳細は、柿沼太一編著『ディープテック・スタートアップの知財・契約戦略』(中央経済社、2024)31 頁〜〔森田裕〕参照。2 : アルゴリズム・ノウハウの知財戦略〜秘匿化か権利化か〜

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