筆者を代表して 柿沼 太一はしがきiiAI と関わるのかを軸に論点を整理しています。第1章ではその整理方法と本書の全体構成を示します。第2章から第5章は、「生成 AI 開発・提供・利用」×「著作権・それ以外の知的財産権・個人情報・機密情報・不正競争防止法」について、実際によくご相談をいただく課題とその解決方法を中心に詳細に説明をしています。第6章では、AI 開発において避けて通れない OSS(オープンソースソフトウェア)やオープンデータのライセンス問題について、主要ライセンスの性質や注意点、AI 開発特有の論点を整理します。第6章の執筆に際しては日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士の上山浩先生から、ライセンス実務に関する多角的な視点と実務上の論点整理について、多大なるご助言をいただきました。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。なお、内容の不正確さや不備がある場合には、すべて筆者の責任です。ChatGPT 等の生成 AI サービスを業務に活用する際、API や Web UI を通じた利用には特有の契約リスクが伴います。第7章では、利用規約の読み方、入力・出力の取扱い、責任制限等について論点を明確にします。第8章から第 10 章は、AI システム開発と知財・契約戦略について、前提となる基礎知識(第8章)から始まり、自社の AI 技術や学習済みモデルをいかにして他社からの模倣や流出から守るか(第9章)、共同研究、PoC、受託開発といった開発形態ごとに、契約実務で交渉対象となる主要論点の解説(第 10 章)をしています。第8章から第 10 章は筆者のこれまでの経験を全て盛り込みました。第 11 章は企業への生成 AI 導入に向けて、利用ガイドラインの整備、入力情報の精査、利用目的の明確化など、社内対応上の留意点を整理しています。単なる法的リスクの指摘だけでなく複数のガイドラインの雛形も紹介するなど、運用実務も視野に入れた内容です。本書が、読者の皆様の業務や研究活動において、AI の法的課題を解決するヒントや実務的な知識を提供し、各専門分野間の連携を深める一助となりましたら幸いです。2025 年6月
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