AI大全
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あとがきあとがき665本書執筆時点(2025 年)において、日本企業やアカデミアにおける AI 開発・業務利用の量や質は、世界的に見てまだまだトップレベルとは言えません。それに対する危機感が本書執筆の大きな動機となりました。法的にできること、できないこと、リスクがあることを正確に把握し、時にはリスクをとって進めるというスタンスが日本企業と日本の研究者には求められていますし、法律実務家は企業や研究者の意思決定を的確にサポートする役割が必要です。筆者(柿沼)は、AI やデータと知財・個人情報・業務利用などに関する情報発信をブログやセミナーなどの形式で長い間行ってきましたが、書籍を執筆・出版したことはありませんでした。これは、技術の発展が極めて速い AI・データ領域において、更新や追記が難しい書籍というフォーマットで情報発信をしても意味がないのではないかという迷いがあったこと、また自分の経験や知識を1冊の本という形で世に出す自信がまだなかったからです。しかし、生成 AI に関する法的論点とその解釈の方向性がある程度出揃ってきた現在、筆者の経験や知識もそれなりに蓄積してきており、書籍とすることで読者の役に立つレベルに達しているのではないかと思えるようになったことから、本書の執筆・発刊に至りました。本書は、執筆時点(2025 年3月)で行われている最先端の議論をベースにしつつ、筆者の個人的な考えも盛り込みました。その意味でかなり踏み込んだ内容も含まれていますが、読者の皆様からのご意見・ご批判をお待ちしております。本書の執筆に本格的に着手したのは 2024 年5月ですが、脱稿までに約1年間と想定以上に長い時間がかかりました。これは、本書がカバーしている範囲が著作権、著作権以外の知財、個人情報、不正競争防止法、OSS、生成 AI サービスの利用規約、AI システム開発の知財・契約戦略、企業への生成 AI 導入ノウハウという法理論から実務対応まで、広い範囲を含んでいるためです。すでに公表・刊行されている関連資料の網羅的な確認・検討はもちろんのこと、筆者自身の知識・ノウハウの棚卸しと構造化、共著者である杉浦弁護士との膨大なディスカッションを行った結果、執筆には1年間を要しました。執筆期間中は、執筆にほとんど時間がとれず遅々として進まないこともありましたが、日本加除出版の盛田さんの叱咤激励ときめ細やかなサポートのおかげで

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