離法
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 生命保険金が受取人固有の財産であり遺産分割の対象にならないとしても、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法 903 条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、民法 903 条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となってしまいます(最二小決平成 16 年 10 月 29 日民集 58 巻 7 号 1979 頁)。 どういった場合に持戻し対象になってしまうかについては、上記決定では、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべき」と判示されています。 名古屋高決平成 18 年 3 月 27 日(家月 58 巻 10 号 66 頁)では、相続財産の総額と生命保険金の総額の比率が 61.1%であった事案で特別受益に準じた持戻しを認めています。 特段の事情があるかは様々な事情を考慮して決まるので、単に比率だけで決められませんが、60%を超える案件で持戻しを認めたという裁判例は一つの参考になるかと思います。 離婚後に再婚しました。再婚した妻には前の夫との間の子どもがいますが、私と今の妻との間には子がいません。私には前の妻との間に子がおり既に独立して暮らしています。 私が妻より先に死んで妻が私の財産を相続した場合、その後に妻が亡 178  第 7 章 相  続87 再婚後に子どもがいない場合の相続QColumn ⑪ 生命保険のかけ過ぎに注意

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