もあることにも留意が必要です。例えば「法律的にはこれが唯一の正解です」と一方的に示すと、事業全体の最適化を阻み、事業部門との信頼関係を築けないおそれがあります(後述茅野氏の指摘)。日本国内における過去25年間の先達らの知見の集積により、私たちは「会社員としての組織内弁護士の理想像」について多くの手がかりを得ることができます。以下では、5人の論者が示す要素を通じ、組織内弁護士に期待される資質を多面的に浮き彫りにします。桝口豊氏「日本企業の国際競争力強化という点において、企業がいかにイノベーションを起こし、社会へ価値を提供し企業価値を向上させていくかが最大の課題であるところ、企業の法務機能は、その課題に規制改革も含めたソリューションを示す強力なツールとなり得る。」―桝口豊「「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書~令和時代に必要な法務機能・平野温郎教授「求められる資質・能力は、企業・ビジネスの深い理解のほか、①幅広い専門的知識、②法的思考力、③社会常識・人間力、そして④語学力……である。」梅田康宏弁護士「弁護士資格のある法務部員には、司法修習まで含めた総合的な法曹教育を受けており、訴訟実務を理解していることによる案件の先読み能力があると思います。」―平野温郎「国際競争力に資する法務人材の獲得・育成の要点」ビジネス法務2018年11月号29頁―髙中正彦ほか「〔座談会〕組織内弁護士」ジュリスト1536号58~71頁法務人材とは~」の概要」金融法務事情2130号42頁103 第 3 章(金貨 9 / 39)1 企業の一員になっても、絶対に捨ててはいけないたった 1 つのもの
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