査上の定義はないものの)組織内に根づく価値観・行動規範・暗黙知などを十分に把握せず、その背景や意義を自分の行動や判断に反映できていない状態をいいます。そしてこれは、3枚セットの金貨の2枚目である「組織人としての意識不足」と重なり合う部分があるように思われます。結論として、ここでのアンラーニング(学習棄却・学びほぐし)の要点は、あなたは弁護士としての専門性を携えていても、組織を拙速に改革するために招かれたのではないことを理解することです。新たに組織内に入ったあなたは、未知の環境に一歩踏み出した探検家です。あなたには、最初の数か月間「観察と学習」のための時間が与えられています。あなたが初日から誤解を招かないように気をつけるために、また、現在進行形でお悩みの場合には、明日からどうすればよいのか、私なりの対処法を心を込めてお伝えします。例えば、外部の法律事務所で培ったノウハウや事例を、入社直後に「私の前の職場では◯◯の方法を採用していました。大手の△△社でも◯◯を実践していましたので、ここでも◯◯が最適だと思います」という形で提案すると、周囲から「我が社の文化をまだ十分に理解していないのでは」と受け取られるおそれがあります。前職の常識を新しい会社にそのまま適用しようとすると、往々にしてミスマッチが生じやすいのです。実際、米田憲市編『会社法務部〔第12次〕実態調査の分析報告』(商事法務、2022年)241頁の調査によれば、新しく採用した弁護士への懸念事項として1164社の51・8%(603社)が「企業文化や企業風土に対する理解」を挙げています。せっかく期待を込めて迎え入れた弁護士に対して、「うちの文化を分かっていない」という印象を最初に持ってしまうのは、組織にとっても、本人にとっても大きなリスクです。信頼が築かれる前に距離を置かれてしまう可能性が高まります。そのまま前職のやり方を持ち込むリスク108
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