131 移送・回付をめぐる諸問題 少年は,A県内でVを殴ってけがを負わせたという傷害保護事件でA家庭裁判所に送致され,観護措置1)をとられた。少年は,事実を認めている。少年は,B県の両親宅から家出をし, 1 か月ほどA県内の友人宅を転々としていたが,逮捕勾留をきっかけに,家出前に居住していたB県の両親宅に帰住することを表明している。B家庭裁判所に移送すべきか。 少年事件については,少年の要保護性に関する判断が不可欠であり,少年や両親の住所地とは異なる裁判所において事件を処理しようとした場合,家庭裁判所調査官(以下「家裁調査官」という。)による少年の生活環境の調査や,両親の調査・審判への出席に困難を生じる可能性がある。そこで,少年が両親とともに自宅で生活しているような場合,少年の住所地に移送するのが一般的であるが,【設問1】では,少年が両親宅を家出している。このような場合にもB家庭裁判所に移送すべきか。 少年保護事件の管轄は,「少年の行為地,住所,居所又は現在地による」(少年法5条1項)。「住所」「居所」は民法上の概念に従うとされる。2)住所は,「各人の生活の本拠」(民法22条)を指し,居所は,自然人が多少の期間継続して居住するが,その場所との密接の度合いが住所ほどには至らない場所を設問1 少年が両親宅から家出している場合の両親の住所地への移送1 問題の所在2 少年事件の管轄1) 本稿では,少年鑑別所に送致する観護措置(少年法17条1項2号)を指す。2) 田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法〔第5版〕』(有斐閣,2024)96頁解 説移送・回付をめぐる諸問題
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