裁少
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3 管轄の基準時4第1部 少年事件の実務上の諸問題3) 我妻栄『新訂民法総則(民法講義Ⅰ)』(岩波書店,1965)97頁4) 山野目章夫編『新注釈民法⑴ 総則⑴』(有斐閣,2018)579頁〔早川眞一郎〕5) 裁判所職員総合研修所監修『少年法実務講義案〔4訂版〕』(司法協会,2025)76頁参照。6) 中島常好ほか「少年保護事件における移送,回付を巡る諸問題」家月43巻7号8頁参照。7) 少年の意向確認方法については,【設問1】の4で後述する。8) 少年の現在地についても,土地管轄が認められるため,【設問1】のような身柄事件において,土地管轄のない裁判所が移送を受けた場合,再移送による時間のロスを避けるべく,少年の現在地として土地管轄を認め,事件を処理することも考えられるが,もとより土地管轄のない裁判所への移送を行うべきでない。9) 東京高決平成16年9月8日家月57巻4号90頁10) ここでいう「処理」とは,移送決定等の処分を指す。もっとも,在宅事件において,いい,3)現在地とは多少の期間の継続的居住があることによって区別される。4)少年が,両親のもとから家出をしているという場合,少年の住所は,両親を中心とした生活関係にあるかどうか,両親のもとを離れていた期間,理由等の具体的事情を考慮して判断することが相当である。5)すなわち,少年に両親のもとに戻る意向があり,両親のもとからの家出が,一時的又は偶然的にとどまるという場合には,少年の生活の本拠が依然両親と同一であるとして,少年の住所は両親の住所と同一であると認めることができる6)と考えられることから,両親の住所を少年の住所と認めて両親の住所地に土地管轄を認めることが可能であろう。 しかしながら,少年が,両親のもとに戻る意思なく,長期間家出をするなどしている場合には,両親の住所を少年の住所と認めて両親の住所地に土地管轄を認めることは困難である。7)事件を受理した家庭裁判所に管轄がない場合には,管轄家庭裁判所への移送が義務付けられていること(少年法5条3項)からも,移送予定先の家庭裁判所に管轄が認められるかは,慎重に判断すべきである。8) 管轄の基準時は,原則として家庭裁判所の事件受理時とされ,9)受理の時を一応の標準として裁判所に事件が係属するが,事件係属後に少年の住所等が変わった場合には,保護の適正を期する趣旨から,その地にも新たな土地管轄を生じるものと解するのが相当であり,処理時10)をも基準とすることがで

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