4 少年や親の意向の確認方法51 移送・回付をめぐる諸問題きると考えられる。11) 受理時には,両親の住所に土地管轄を認めることができない場合であっても,少年が事件を契機として両親のもとに戻る意向を示し,両親もそれを希望するなどしており,両親の住所が少年の生活の中心地になるといえる場合については,少年の住所は両親の住所と同一と認められ,処理時の土地管轄が両親の住所地にあると解することもできると思われる。12) 【設問1】では,逮捕勾留をきっかけに,家出前に居住していたB県の両親宅に帰住することを表明しているから,処理時の土地管轄が両親の住所地にあるものとして,B家庭裁判所に土地管轄が認められる。また,少年の家出が短期間にとどまる場合には,少年に両親のもとに戻る意向があるか明らかでないというときであっても,両親宅が少年の生活の本拠としての性格を失ったといえず,B家庭裁判所に土地管轄を認めるという余地もあり得よう。これに対し,少年が,B県内の両親宅を家出し,自力でA県内にアパートを借りて単身で暮らしており,両親のもとに戻らない意思を明らかにしているという事例を考えてみると,単身で暮らしている期間が短期間にとどまるものであっても,少年に両親のもとを離れて生活を続けるという意向があると認められ,少年の生活の本拠は,単身で暮らしているアパートであって,両親の住所を少年の住所と認定することは困難である。 このような少年の意向はどのように確認すべきであろうか。法律記録を精査するほか,【設問1】のような身柄事件では,観護措置手続で少年に直接意向を聴き,その意向を陳述録取調書に残す運用が考えられる。また,少年が両親のもとに帰住することを拒否している場合には,観護措置手続前に,家裁調査官の受理面接を行い,少年の生活状況や両親との関係を確認した上調査がかなり進行した段階や,調査終了後に少年の転居が判明したという場合に,管轄を処理時基準として,少年の住所地に移送する必要は乏しいと思われる。11) 裁判所職員総合研修所監修・前掲注5)77頁12) 中島ほか・前掲注6)24頁。これに対して,このようなケースでは,少年に両親のもとに戻る意思がそもそも受理時にもあったと認められるから,管轄の基準時を処理時と解さなくても,両親宅の住所地に土地管轄を認め得るという考えもあり得よう。
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