2311 少年事件の調査・審判うな観点から記録を読んでいるのでしょうか。岩﨑 裁判官の岩﨑です。まずは,送致事実が非行事実として認定できるのかという観点から,冷静に法律記録を検討するのが重要だと思います。認定するに足りる証拠があるのか,足りなければ証拠を補充してもらうための手段をとるべきなのか。また,補強証拠があるのかも問題となります。場合によっては,送致事実が認定できず,認定を替えることも検討しなければなりません。処分を決定する上でも非行事実は基礎となるので,これらの検討が重要です。河畑 裁判官の河畑です。要保護性の検討という点では,私は,非行に及んだ経緯や動機,非行の態様,非行後の行動などに着目して少年の供述調書を読んでいました。また,少年の身上調書や保護者の調書等も読み込んでいました。前歴や補導歴にも着目していました。在宅事件でも同じです。藤永 裁判官の藤永です。そのほかに,保護者が誰か,その呼出しをどうするか,被害者照会の要否や被害者意見陳述・傍聴等の見込みなどにも留意し,全体的な審理計画を立てる意識も必要かと思います。加藤(司会) 調査官は,調査命令が出された当初はどのような点を検討なさるのでしょうか。松本 調査官の松本です。調査官も要保護性を検討するための情報に留意して記録を読んでおり,その点は,皆さんの発言と共通するところです。少年や保護者等の調書以外では,例えば,少年が記載した上申書を確認していると,平仮名ばかりで記載されている場合があり,そこから知的能力の仮説を立て,要保護性を検討する材料の一つにしています。また,要保護性を検討するための情報は,同時に調査計画を検討するための情報ともなるため,調査官は,両方の観点を意識して記録を読んでいます。 調査計画では,次のような点を主に検討しています。 まず,調査の対象としては,少年や保護者等のほか,学校や児童相談所,保護観察所等の関係機関などがあります。 次に調査の方法です。面接,電話聴取,書面照会がありますが,重要な情報はできるだけ面接で収集しています。調査仮説をできるだけ広げた上で少年や保護者等に会いたいので,面接までに収集しておくべき情報が何
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