第2部 座談会 少年事件の調査・審判の工夫かを整理し,調査の順序を考えています。また,いつ頃,どのような教育的措置を実施するかを考えます。例えば少年の知的能力が低い場合,集団で実施している講習に参加させても理解が深まりにくいため,調査官が少年の能力に合わせて個別に教育的措置を行う必要があります。このほか,ケースによっては,心理テストの活用や在宅鑑別の実施を検討することもあります。 調査の期間については,ケースを見通して,教育的措置まで含めた面接の回数や時間などを踏まえて考えています。 ほかに,秘匿情報に留意したり,被害者調査の要否を検討したりもしています。 さらに,危機管理の観点から,例えば,少年や保護者等が精神的に不安定であるとうかがわれる場合などには,複数の調査官で面接したり,関係職種と情報共有を図って対応を検討したりします。加藤(司会) 付添人としてはいかがでしょうか。土橋 弁護士の土橋です。家裁係属後は,いの一番で法律記録を閲覧することが最も重要だと思っています。付添人は,被疑者国選弁護人として活動する中で,少年の言い分を聞いたりして一定の情報を得ている場合が多いです。しかし,家裁係属まで証拠は閲覧できないわけですから,まずは記録を閲覧して,少年の供述調書が少年の言ったとおりにできているか,少年の言い分と異なる証拠があるかを含め,被疑者段階で得た情報と記録から得られる情報に相違がないかを確認します。 そして,付添人はケースセオリーを立てることが多いです。例えば補導委託にすべき事案であれば,補導委託先を探すのには時間がかかるわけですから,補導委託すべきことを早期に主張することになります。そのように早期に主張すべき事項があるかどうか,という観点で記録を検討しています。 要保護性に関する事項では,少年の言っていることと周囲の大人が見ていることが違う場合もあるので,学校の上申書や,先生の供述調書などに着目しています。232
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