原典に当たるということ重ねてきた。 また,少年審判は,少年の健全育成を目的とすることから,面会,調査,審判での少年及び保護者への働きかけが大きな意味を持つ。そこでの実務家のノウハウを共有することの重要性は大きい。加えて,少年審判は,裁判官,家庭裁判所調査官,裁判所書記官,付添人と関与する職種も多く,関係職種の協働の上に成り立っている。そこで,令和少年実務研究会では,関係他職種の参加も得て,実務的な問題点について座談会形式で経験を交流してきた。 令和少年実務研究会は,日本加除出版株式会社のご協力を得て,それらの成果を『家庭の法と裁判』誌に「少年実務 THE BASICS AND BEYOND」として発表させていただいてきた。この度,それらをまとめて単行本として世に出す機会を得たことを有り難く感じている。 単行本化に当たり,各論稿に必要な修正を加えたほか,連載時には紙幅の関係で省略した章を復活させた(第1部2の設問4,第2部2の中の第5)。また,連載開始時には施行されていなかったことから検討対象としていなかった令和3年改正少年法に関する諸問題の論稿を新たに収録した(第1部12)。さらに,第2部のテーマである少年事件の調査・工夫にとって参考となる藤永会員の論稿を収録した(補論)。ただし,藤永会員の論稿は研究会の議論を経ていないことをご了承いただきたい。2 令和少年実務研究会では,会員の熱意により深い議論ができたと考えている。会員は,関連文献や決定例を精査し,議論を深めた。 法律学に限らず,論文を執筆する際には,原典に当たることは必須だと考える。悪意がなくとも,引用先の記載には,引用先の文脈による制約や避けられない要約のため,引用者の主観による変容が伴う。元の文献の意味を確認するには,原典に当たり,原文を確認するしかない。その点に関連して,少し個人的な体験を記載したい。⑴ ぐ犯事実の縦断的(時間的)同一性 これは,行状を対象とすることから必然的に時間的継続性を有する事実であるぐ犯事実を,どの時点で法的に1つの事実として区切るのかという問題である。実務では,ぐ犯事実で観護措置をとった少年を試験観察に付したところ再びぐ犯状態になってしまった場合に再度観護措置をとることができるii
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