iii原典に当たるということか,その場合,終局決定で認定するぐ犯事実は1つになるのか2つになるのかという形で問題となる。本書でも,河畑会員が第1部6「ぐ犯保護事件の諸問題(その1)」で論じている。 この問題については,かねてより,①家庭裁判所の事件受理時を基準とし,それ以前のぐ犯事実とそれより後のぐ犯事実との間に同一性はないと解する実と受理以降終局決定までのぐ犯事実との間に同一性を認める説(事件終局説もあると紹介されることがある。神戸家決昭和48年1月19日家月25巻10号130頁が③説を採っているのではないかというのである。しかし,『家庭裁判月報』の同決定書を読むと,同決定書は,非行事実について,「少年は,」で書き出した後,「一」として,終期の記載のないぐ犯行状を記載し,「二」として,試験観察決定後のぐ犯行状を記載し,それら両者を受けて,「いずれも保護者の正当な監督に服さず,または自己の徳性を害する行為をする性癖があり,このまま放置すればその性格環境に照らし,将来罪を犯すおそれがあるものである。」とまとめている。「第一」「第二」ではなく「一」「二」と記載していること,ぐ犯性をまとめ書き部分に記載していることに着目すれば,同決定は一二を合わせて1つのぐ犯事実としているとも解せる。そうではなく,同決定は一と二を別個のぐ犯事実とするものであると理解しても,次の疑問が生じる。すなわち,同決定書には,家庭裁判所の事件受理から試験観察決定までの間の事実の記載はないことから,おそらくその間にはぐ犯事由として取り上げる事情がなかったと思われる。そうすると,試験観察決定時説でなく事件送致時説を採っても同決定と同じく2つのぐ犯事実を認めることになるのだから,同決定を試験観察決定時説を採るものとして紹介することには疑問が残ることになる。本書の河畑論稿では試験観察決定時説を紹介していない。⑵ 刑事処分相当性と保護処分相当性 家庭裁判所は,少年法20条1項,2項本文,62条1項,62条2項本文に該当する事件は検察官に送致しなければならない。ここでは,検察官送致という法的効果をもたらす法的要件を刑事処分相当性と記載する。検察官は,刑説(事件送致時説),②終局決定時を基準とし,家庭裁判所送致以前のぐ犯事時説)の対立があった。これら両説に加え,③試験観察決定時を基準とする
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