原典に当たるということの判断を可及的速やかに収斂するために考慮すべき事項」家判11号56頁)。事処分が相当であるとして検察官送致された事件については,原則として起訴を強制される(同法45条5号本文)。ところが,起訴された事件を担当する刑事の裁判所は,少年を保護処分に付すのが相当と認めたときは,事件を家庭裁判所に移送しなければならない(同法55条)。ここでは,家庭裁判所移送という法的効果をもたらす法的要件を保護処分相当性と記載する。 新たな事情が加わった場合を除き,事件が家庭裁判所と刑事の裁判所を何度も往復して少年の処遇が決まらない事態が発生することは避けるべきであるから,保護処分相当性は刑事処分相当性と表裏一体のものとして解釈すべきとするのが通説・実務になっている。それでも,刑事処分相当性は,多分に規範的判断を含むものであるから,家庭裁判所の刑事処分相当性判断と刑事の裁判所の保護処分相当性の判断にずれが生じる可能性は否定できない。しかし,それは少年の健全育成の観点からは望ましいものとはいえない。そこで,検察官送致決定に刑事の裁判所に対する拘束力が認められないのか,刑事の裁判所は要保護性について専門的な調査機構を持つ家庭裁判所の判断を尊重すべきではないのかが議論されている。 前者に関して,最三小判昭和25年10月10日刑集4巻10号1957頁が「少年法第55条を適用して被告人を保護処分に付するを相当とするか否かは事実審たる原審の自由裁量にまかせてある」と判示していることから,判例は検察官送致決定の刑事の裁判所に対する拘束力を否定していると指摘されることがあった。しかし,最高裁判所刑事判例集の同判決等を読むと様相が異なることが分かる。まず,同判例集に掲載されている上告理由が引用する原判決が摘示した事実は,「被告人は18歳に満たない少年であるところ」という文言から書き始められており,その犯罪事実は昭和23年1月13日の窃盗,窃盗未遂であることが分かる。犯罪事実が現行少年法が施行された昭和24年1月1日より1年近く前のものであり,摘示事実が18歳未満の者を少年と定めていた旧少年法1条を意識した表現になっていることから,窃盗,窃盗未遂事件は,旧少年法下の手続により起訴されたものである可能性があることになる。筆者はかつてその旨指摘した(「少年(刑事)事件において家庭裁判所と刑事裁判所 さらに,横澤会員も同判例集を読んで重要な指摘をしている。すなわち,iv
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