裁少
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v原典に当たるということ同判決は上告を棄却するに当たり旧刑事訴訟法446条を掲げていることから,現行刑事訴訟法の施行日である昭和24年1月1日より前に起訴されたものと考えられる(刑事訴訟法施行法2条本文,4条1項本文)。そうすると,起訴以前の手続にその時点では施行されていない現行少年法が適用される余地はないことになる(「法55条の移送と事実審裁判所の裁量権」川出敏裕編『少年法判例百選〔第起訴前は旧少年法が適用されていたことが明らかとなった。 旧少年法は,検察官先議を採っていたが(旧少年法62条),実際には保護処分優先の運用がなされ,検事は多数の事件を少年審判所に送致していたという。そうすると,同判決の事件も少年審判所の検事送致(同法47条1項)を経ていた可能性は高いことになる。それゆえ,検察官先議により直接刑事の裁判所に起訴された可能性があるとした前記拙稿は誤解を招く表現をしていたというべきである。とはいえ,行政組織である少年審判所の検事送致と司法機関である家庭裁判所の検察官送致決定を同視することはできないであろう。旧少年法には検事送致後の起訴強制を定めた規定はないことを考慮するとなおさらである。そうすると,同判決を検察官送致決定が刑事の裁判所に対して拘束力を有するかについての先例と捉えることはやはり不当というべきであろう。 もちろん,同判決の先例性を否定することが検察官送致決定の拘束力を認めることに直結するわけではない。改めて,保護優先主義,検察官送致決定の是正の必要性等を考慮して結論を出すべきである。⑶ 観護措置をとらないときの手続 これは裁判の原典に当たるという話ではなく,条文に当たるという話になる。 身柄を同行又は送致された少年について,家庭裁判所が観護措置をとらないとの判断に至ったときは,少年は速やかに釈放されるべきであることに争いはない。実務においては,裁判所書記官を通じて押送してきた警察官に釈放するよう告げ,記録の表紙等に観護措置をとらなかった旨記載して裁判長等が押印している例が多い。そして,実務家向けの本の中には,家庭裁判所が釈放指揮をするのが一般的であると解説しているものがある。しかし,釈2版〕(別冊ジュリスト270号)』(有斐閣,2024)234頁)。横澤会員の指摘により,

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