第1章遺産分割総論(調停前の協議を含む)3CASE 1 遺産分割手続の全体像 相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,相続財産を負債を含めて全面的に承継する単純承認,相続した財産の範囲内で債務の弁済義務を認める限定承認,財産の承継を全面的に否定する相続放棄のいずれかを選択できる(民915条)。相続放棄をした相続人は,その相続に関しては初めから相続人とならなかったものと扱われる(民939条)ので,相続放棄者の直系卑属は,代襲相続をすることはない。 遺産分割の当事者となるのは,原則として共同相続人であるが,目的物が特定されていない包括受遺者(民990条),相続分の譲受人も含まれる。 以上の諸事情を踏まえて,法定相続人を始めとする遺産分割の当事者を確定する。遺産相続の対象となるべき者の一部を除外して行われた遺産分割協議は無効となる。イ 遺産の範囲 分割対象の遺産となるものは,①被相続人が相続開始時に所有し,②分割時も存在する,③未分割の,④積極財産であることを要する。ア 一身専属権 被相続人の財産であっても,被相続人の一身専属権は,相続人に承継されない(民896条ただし書)。明文の規定があるものとして,代理権(民111条1項),使用貸借における借主の地位(民597条3項),定期贈与(民552条),雇用契約上の地位(民625条),委任契約上の地位(民653条),組合員の地位(民679条)等がある。これらは,相互の信頼関係を基礎にする契約であるから,当事者の死亡によって契約上の地位は承継されないこととなる。 扶養請求権,財産分与請求権,生活保護法に基づく保護受給権は,明文規定はないものの,一身専属権であって,相続人に承継されない。ただし,扶養料や財産分与について一定の給付を定める調停が成立していた場合など,一定額の給付請求権として具体化していた場合は,一身専属性が消滅して相続可能となる。イ 債 権 貸金債権,賃料債権,不当利得返還請求権や損害賠償請求権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるので,相続人全員の合意がない限り,遺産分割の対象とならない。 一方,最大決平成28年12月19日民集70巻8号2121頁は,普通預金債権,通
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