Q1 内部通報対応の必要性Q18 調査員不足 左手首の Apple Watch に視線を落とすと、液晶の数字は無情にも 20 時を回っていた。会議室の蛍光灯は、昼間よりも白々と冷たく光を放っている。外はとっくに暗く、窓ガラスに映るのは、自分の疲れた顔と、ネクタイに刻まれた皺ばかりだ。今日も残業か─中田は、ごく小さな吐息を漏らした。 株式会社ネクストレイの人事課長。5 年前、40 歳で中小企業から転職した。 前職では人事の端くれとして働きながら、3 年かけて社会保険労務士の資格を取った。深夜までの残業後にテキストを開き、休日は試験勉強に明け暮れた。合格発表の日、同僚からの「おめでとう」という声に、少し誇らしい気持ちになった。 だが、その中小企業では制度改革にも限界があった。もっと広い舞台で、人事の理想を形にしてみたい─そう思い、上場企業の募集を探して見つけたのがネクストレイだった。 面接では、胸を張って語った。 「働きがいのある制度を作り、社員が誇れる職場にします」 人事部長も、何度も頷きながら聞いていた。 しかし、入社してわずか数か月で気付く。理想は、現実の前ではあっけなく潰えるのだと。新しい制度を通すには、幾重もの稟議を経なければならない。詳細な資料を作り、役員会まで持ち込んでも、社長の一言でひっくり返される。 「上場企業といえども、ワンマン経営なら中小企業と変わらない」 それが、中田が 5 年かけて得た答えだった。あの面接で自分を採用した人事部長は、自分が入社する前に別の会社へ去っていた。 3 年目、社内の内部通報窓口の調査担当を兼務することになった。社員数の増加とともに、通報件数も増えていた。多くはパワハラやセクハラ。これまで法務部が対応していたが、人手が足りず、処理が遅れがちだった。そこで、人事部にもお鉢が回ってきた。Q16 従事者(調査員)の指定 資格を持ち、社内調整の経験もある─そう見込まれて、中田に白羽の矢2
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