ストーリーでわかる 内部通報対応と事実認定
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パワハラストーリー13第 1 話 パワハラが立った。 最初は軽く考えていた。 「きちんと調べれば、真実は見えてくる」 そう信じて疑わなかった。だが、現実は違った。 書籍や研修で扱う事例は、真実が既に確定している。 「A が B に暴言を吐いた」という事実を前提に、「それがハラスメントか否か」を判断する。しかし、実際の現場では─「暴言を吐いたかどうか」すら分からない。Q78 事実認定の困難さ言い分は食い違い、証拠は乏しい。それでも会社は結論を出さねばならない。 「真実は、手を伸ばしてもつかめない霧の中にある」 迷えば誰かの人生が傾き、決めれば別の誰かを傷つける。その重みが、中田の心をじわじわと蝕んでいった。 思い出すだけで深いため息が漏れるあの案件が舞い込んできたのは、調査担当を務めた 3 件目のことだった。Q19 調査経験不足男性上司 A が、女性部下 B を執拗に飲みに誘った─というセクハラの通報だった。Q80 セクハラ該当性 ヒアリングの際に A は、「誘ったのは B からで、ガード下の赤ちょうちんで軽く飲んだだけ。セクハラめいた言動は一切していない」と力説していた。 これに対し B は、「仕事終わりに待ち伏せされ、二人きりで飲みに行くことを何度も強要された。家に帰りたいのに、断れば人間関係が悪化すると思い、仕方なく応じていた」と潤んだ眼で訴えかけた。 二人の言葉は水と油のように交わらなかった。一致していたのは、「二人きりで複数回飲みに行った」という事実だけ。 A には妻と二人の子がいた。中田は「家庭を守るために嘘をついている」と考えた。戒告と部署異動─中田はそう報告書に記した。コンプライアンス委員会

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