では大きな異論もなく、処分はあっさりと決まった。Q85 懲戒処分該当性 処分を告げた瞬間、A は目を見開き、肩を震わせた。低く押し殺した声で、何かを言おうとしたが、最後まで言葉にならなかった。中田は内心、「自業自得だ」と思った。 数か月後、A は離婚し、会社を去った。それから半年ほど経ち、B も退職した。 そのとき、中田は耳にした。B が仲の良い友人にこう漏らしたと─ 「A さんには悪いことしちゃった」 それはこういう意味だったらしい。 A と B はもともと仲が良く、互いに誘い合って飲んでいた。だが、B が次第に A へ好意を抱くようになり、A との間にすれ違いが生じた。そして、感情が爆発し─あの通報に至った。Q14 不正の目的による通報 それが事実かどうかは分からない。しかし、今にして思えば、あの日、処分を告げたときの A の眼─あれは、嘘をつく人間の眼ではなかったのではないか。 なぜ、同僚にヒアリングをしなかったのか。なぜ、過去の上司から B の人柄を確認しなかったのか。当時の自分の判断の浅さが、胸の奥で鈍く疼く。安易な調査が、一人の人生を壊すことがある。それを知った日から、中田は帰宅しようと時計を見るたびに、A の顔を思い出すようになった。Q9 不十分な調査の影響 中田は出勤し、デスクに腰を下ろすと、まずはコーヒーをひと口すすり、いつものようにパソコンの電源を入れた。立ち上がるまでのわずかな時間、彼は今日の予定を頭の中で整理する。午前は資料の確認、午後は人事部の定例ミーティング。淡々とした一日の始まりのはずだった。 しかし、画面に浮かび上がったメールソフトの未読一覧に、ひときわ目を引く送信者名があった。4
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