パワハラストーリー17Q25 調査計画の策定第 1 話 パワハラ 細かい指示や指導が、場合によってはパワハラと認定されることがあるのか。もしあるとすれば、それはどんな条件下なのか。 彼はペンを指先で回しながら、目の前の書類に視線を落とした。静かな執務室に、カチリと時計の秒針の音だけが響いた。 中田の机の上には、昨日から開きっぱなしになっているパワハラ関連の書籍や、プリントアウトした Web ページの束が散らばっていた。ページの端は折り目がつき、蛍光ペンの跡が無数に走っている。その光景は、彼がここ数日、いかに真剣に資料を読み込んでいたかを物語っていた。業務上の指示や指導が、どのような場合にパワハラに該当するのか─。Q79 パワハラ該当性判例や専門家の論評を重ねて読むことで、おおよその輪郭はつかめてきた。だが「おおよそ」とは、つまりまだ判断の余地が残されているということでもある。法的な定義や一般的な判断基準を頭に入れたとしても、現場の一件一件は複雑で、単純に当てはめるだけでは結論が出ない。Q78 事実認定の困難さ ならば次は、今回のケースの調査計画だ。社内規程では、必ず計画書を作成することと定められている。調査の趣旨、対象者、方法、そしてスケジュール─それを明文化し、関係部署と共有することで、調査は初めて公式にスタートする。だが、かつての中田は、簡単な案件なら計画など立てず、思いつくままに動き出していた。あの頃は「時間をかけず、迅速に動くことこそが誠意だ」と思い込んでいたのだ。 その危うさを身に沁みて理解したのは、あの苦い失敗を経てからだ。早すぎる判断が人を傷つけ、取り返しのつかない結果を生む─それを知って以来、中田は慎重さを欠かすことができなくなった。場当たり的な調査は、必ずと言っていいほど漏れや誤りを生む。机の上に散らばる資料は、その反省の証でもあった。モニターを見つめながら、中田は今回調べるべき項目を箇条書きにして
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