難しい依頼者と出会った法律家へ

パーソナリティ障害の理解と支援
本体 ¥ 2,300
¥ 2,530 税込

著者:岡田裕子/編著
判型:A5判
ページ数:252頁
発刊年月:2018年2月刊
ISBN/ISSN:9784817844576
商品番号:40708
略号:難依

商品情報



情緒不安定、高飛車な態度をとる、疑り深い など、
感情・思考・対人関係に問題を抱える
難しい人々からの相談や依頼に、
こまりはてた経験を持つ法律家の皆さんへ。

●「難しい依頼者」の概念を整理し、パーソナリティ障害についての基礎知識や見立てを解説(第I部)。
●法的紛争の現場に出現しやすい当事者類型に近いパーソナリティ障害の類型を6つ取り上げ、それぞれの特徴、 原因、対応法を説明した上で、具体的事例を設定し、法律相談の受付時から受任・手続に至る過程を丁寧になぞりながら、対応のポイントを提示(第II部)。
●第一線で活躍する精神科医が、パーソナリティ障害の基礎知識やパーソナリティ障害の方々との関わり方について解説(第III部)。

目次

【第I部難しい依頼者をどう理解するか】
第1章 難しい依頼者とパーソナリティ障害
1 難しい依頼者
(1) 難しい依頼者とは
(2) やさしい事件を難しくする依頼者
(3) 弁護士が抱く感情の難しさ
(4) なぜ現在,難しい依頼者が問題となっているのか
2 難しい依頼者とパーソナリティ障害
(1) パーソナリティ障害と難しい依頼者との関連性
(2) パーソナリティ障害というスティグマにしてはならない
(3) 法的紛争の渦中の一般的心理状態
(4) 難しさを生み出す様々な精神疾患
3 パーソナリティ障害とは
(1) パーソナリティ障害とは
(2) パーソナリティとパーソナリティ障害
(3) DSM- 5 におけるパーソナリティ障害
(4) パーソナリティ障害の類型と法的紛争への関わり方
4 パーソナリティ障害の原因
 COLUMN 認知の歪曲について

第2章 難しい依頼者の見立て
1 関係性がこじれないための見立ての必要性
 COLUMN 問題は他者にあると考える
2 パーソナリティ障害についての知識の有用性
3 パーソナリティ障害の「診断」の難しさ
4 弁護士がパーソナリティ障害を「見立てる」ことの意味
(1) 理解によって得られる安心感
(2) 依頼者のパーソナリティを吟味することの効用
(3) 具体的対応法まで明確に分からなくても対応力は上がる
(4) パーソナリティ障害の理解が役立つ場合の例
5 依頼者のパーソナリティの見立て方(アセスメント)
(1) これまでの経歴の中のパターンに注目する
(2) 非言語的メッセージを感じ取る
(3) 紛争の渦中という状況ストレスの考慮
第I部:文献

【第II部パーソナリティ障害の類型と対応法】
第1章 情緒不安定な当事者(境界性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→情緒と対人関係の嵐に巻き込まれる
2 境界性パーソナリティ障害の特徴
(1) 見捨てられ不安
(2) 両極端な考え・気持ち
(3) 衝動的な問題行動
3 境界性パーソナリティ障害の原因
(1) 生物学的要因 ~うつ病との関連性
(2) 環境的要因 ~被養育体験
 事例 激情にかられたストーカー事件
4 弁護士にとっての難しさと対応法
(1) 衝動的な行動は明確に行動制限する
(2) 見捨てられ不安を防ぐため一定の距離を保つ
(3) 弁護士を理想化することを防ぐ
(4) 感情的になっている時は,実際的問題へ注意を向ける
(5) 複数の弁護士で対応すること

第2章 高飛車な態度をとる依頼者(自己愛性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→健全な自己愛と病的な自己愛
2 自己愛性パーソナリティ障害の特徴
(1) 自分が特別に優れていると信じている(誇大感)
(2) 自分は他者から特別に扱われて当然との気持ちがあること
(特権意識)
(3) 他者の気持ちを理解し,思いやることができない
(共感性の欠如)
(4) 「訴える側」にも「訴えられる側」にもなりやすい
3 自己愛性パーソナリティ障害の原因とこころの動き
 事例 モラルハラスメントの離婚事件
4 弁護士にとっての難しさと対応法
(1) 尊重し承認するスタンスをとる
(2) 特別扱いの要求のすべてに応えようとしてはいけない
(3) 裁判所関係者に悪い印象を与えないように事前準備をする
(4) 和解や調停で妥協してもらうためにプライドをくすぐる
(5) 弁護士への攻撃や批判は,個人的なものと捉えない

第3章  他者を欺き利用する依頼者(反社会性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→良心の痛みなく他者を傷つける人々
2 反社会性パーソナリティ障害の特徴
(1) 規範やルールに従う姿勢がない
(2) 口達者で皮相的
(3) 良心の呵責の欠如
(4) 共感能力の欠如
3 反社会性パーソナリティ障害の原因とこころの動き
(1) 環境か遺伝か
(2) 生物学的要因
 事例 自己中心的な被疑者の刑事弁護
4 弁護士にとっての難しさと対応法
(1) 言葉巧みな嘘にごまかされず,主張の真偽を検証する
(2) 迎合せず,毅然とした揺るがない態度を保つこと
(3) 弁護士自身の安全の確保

第4 章  魅惑的だが不可解な依頼者(演技性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→他者を魅了したい人々
2 演技性パーソナリティ障害/ヒステリー性格の特徴
(1) 注目されたいという欲求
(2) 性的に誘惑的になる
(3) 認知様式の曖昧さ(物事をおおざっぱに見る)
(4) 解離性障害,転換性障害
3 演技性パーソナリティ障害/ヒステリー性格の原因とこころの動き
(1) 生物学的原因
(2) 環境的要因 ~注目を得たいのはなぜか
(3) 認知の特徴と転換,解離
 事例 魅力的なエステティシャンの自己破産事件
4 弁護士にとっての難しさと対応
(1) 丁寧な事実確認の必要性
(2) 症状の出現と対応
(3) 弁護士との関係がこじれないようにするためには

第5章 猜疑心の強い依頼者(妄想性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→疑い深く「好訴的」な人々
2 妄想性パーソナリティ障害の特徴
(1) 猜疑心と他者への不信感
(2) 妄想性パーソナリティ障害における“妄想”の性質
(3) 自分の情報を秘密にしたがる
(4) 執拗な恨みを抱くこと
3 妄想性パーソナリティ障害の原因とこころの動き
 事例 妻の不貞行為を疑う夫のケース
4 弁護士にとっての難しさと対応法
(1) 妄想的な主張は,真摯に事実確認をする
(2) 法的手続・事件の進め方を丁寧に説明して不信感を軽減する
(3) 依頼者と距離を置かないよう心がける
(4) 妄想的な考えを変えようとせず,妄想に基づく危険な行動を変えるよう働きかけること
(5) 弁護士に猜疑心を向けられたときの対応

第6章  ひとりでは何もできない依頼者(依存性パーソナリティ障害)
1 Introduction 
→頼りすぎる人々
2 依存性パーソナリティ障害の特徴
(1) 自分は無力なので1人では生きていけないという信念
(2) 他者は強くて力があるので,他者を頼らなければならないと感じる
(3) うつ病や不安障害との関係
3 依存性パーソナリティ障害の原因とこころの動き
(1) 生物学的要因
(2) 被養育環境
 事例 頼りすぎる主婦の離婚事件
4 弁護士にとっての難しさと対応法
(1) 本音を言える関係づくり
(2) 弁護士が代わりに決断しない
(3) 決断を急がせない
(4) 事件終結時の配慮が必要であること

第7章 パーソナリティ障害以外の精神疾患による難しい依頼者
1 荒唐無稽な妄想について ─統合失調症の可能性
(1) 否定せず,気持ちに共感する
(2) 現実的な問題が隠れていることに留意
(3) 第三者からの裏付けをとる
(4) 全くの妄想である場合の対応
(5) 医療機関への受診の勧めは慎重に
 COLUMN 統合失調症
2 精神疾患を自称したとき
(1) 「診断名」をどう理解するか
(2) 疾病利得について
3 嘘をついている場合 ─演技性パーソナリティ障害・反社会性パーソナリティ障害の可能性
(1) 自分の得にもならない嘘
(2) 自分の有利に事を運ぶための嘘
4 記憶が不明確な場合
(1) 依頼者が比較的若い年代の場合
 COLUMN 解離性健忘
(2) 依頼者が高齢者の場合
 COLUMN 認知症
5 注意力・集中力に問題がある場合 ─注意欠陥多動性障害の可能性
 COLUMN 注意欠陥多動性障害(AHDH)
6 決断できない場合
(1) うつ状態の可能性
(2) 依存性パーソナリティ障害の可能性
7 コミュニケーションが難しい場合─発達障害/自閉症スペクトラム障害の可能性
 COLUMN 自閉症スペクトラム障害[DSM-5]

第8章 対応法のまとめ
1 弁護士─依頼者関係の特徴
(1) 委任─受任の関係であること
(2) 法律や裁判手続といった制度の枠内で仕事を進める必要があること
(3) 仕事を進める際に,依頼者との協働作業が必須であること
(4) 依頼者から成功報酬をもらう必要性
(5) 相手方の存在(紛争場面,勝ち負けを決める状況)
2 対応法の共通原則
(1) 同じ距離感を保つこと
(2) 関係を構造化すること
(3) 複数人でのチーム対応を原則とする
(4) 問題行動には毅然とした管理的対応をとる
3 他の専門職との連携
(1) 精神科医との連携
(2) 心理カウンセラーとの連携
(3) コンサルテーションを受けること
第II部:文献

【第III部精神医学の専門的見地からのパーソナリティ障害の解説】
パーソナリティ障害の基礎知識とそれとの関わり方
1 はじめに
2 パーソナリティ障害の基本的な特性
(1) パーソナリティ障害では基本的に一般の人と共通の特性が問題になること ~異質な特性があるわけではないこと
(2) 一般には軽症の精神障害であること
(3) 自分の行動に責任を持つことができること
3 パーソナリティ障害概念の発展過程
(1) ミロンの理論に基づく類型分類
(2) 多神論的記述的症候論モデルの導入
4 現在のパーソナリティ障害の概念・定義
(1) 従来の考え方を踏襲する立場
(2) DSM-5代替診断モデルの考え方
(3) 類型とその特徴
5 パーソナリティ障害の疫学
6 パーソナリティ障害の病態・病因の理解
(1) 生物学的要因
(2) 生育環境・心理社会的要因
7 パーソナリティ障害の治療
(1) 心理社会的治療(心理療法)
(2) 薬物療法
8 パーソナリティ障害の予後
9 パーソナリティ障害の問題の性質とその対応
(1) 問題の性質
(2) 問題への対応
(3) 精神保健相談機関,精神科治療との関わり
10 おわりに
第III部:文献

あとがき

著者紹介

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